三菱商事は昨年9月と10月に北米で、今年2月には英国の大学で採用活動を実施した。採用担当の責任者らが米国のプリンストン大学やブラウン大学、英国ではケンブリッジ大学やオックスフォード大学など計13の大学を訪問。手掛ける事業が多岐にわたり、世界各地に拠点を持つなど日本独自と指摘される総合商社業界の特色や、同社が取り組む事業について約1時間の説明会を実施した。

三菱商事がオックスフォード大学で行った会社説明会
三菱商事がオックスフォード大学で行った会社説明会
Source: Mitsubishi Corporation

採用チームリーダーの下村大介氏は「三菱商事で活躍してくれる学生がいるならば、日本や世界のどこからでも採用したい」とコメント。経団連の指針に従って日本人留学生は対象外としたが、これまでに現地の大学に在籍する120人以上の学生の選考を行った。今後は中国の大学にも対象を広げることを検討している。

三井物産も今月にロンドンやエディンバラ、10月には米国の主要6都市を訪問して現地の大学生を対象とした採用活動を行う。海外に留学している日本人学生を対象とした7月の選考とは別に採用担当者が現地を訪問する。人材開発室長の古川智章氏は「全員が日本の大学を出たという同じような価値観ではなく、 欧米の大学で勉強した学生も積極的に採用することで多様性を確保したい」と語る。

伊藤忠は、来春の採用に向け昨年11月にニューヨークの大学などで会社説明会を実施したほか、今月にはロンドンの複数の大学で説明会の開催を予定している。海外拠点における現地採用では日本にいる外国人留学生を対象に会社説明会を実施するなどしていたが、人材確保を目指して海外での説明会を初めて開催した。

事業モデルの変化

3日に入社式を迎えた新入社員のうち外国人は三菱商事、三井物産ともにそれぞれ2人。総合商社各社は海外拠点において専門知識を持った現地国籍の人材採用を進めているが、新卒採用に占める外国人の比率はまだ低い。

最大手の三菱商事が約90カ国に200超の拠点を持つなど世界各地でエネルギーや自動車、電力、穀物などの幅広い事業を手掛ける総合商社。かつては商社不要論も叫ばれたが、トレーディングから事業投資に軸足を移すなど時代とともに事業モデルを変化させてきており、多様な価値観を持った人材の確保が求められている。

就職情報を提供するディスコ・グローバル事業企画部の大掛勲・副部長は「国内の大学に通う最近の学生は海外勤務を望まない比率が高いなど内向きの傾向にある。総合商社のビジネスの主戦場が世界へと移る中、国籍を問わず主体性を持って海外でも物おじしない学生が求められている」と指摘する。

日本語能力を不問に

同社が昨年12月初旬にかけて全国の主要企業を対象に実施した調査(回答社数628社)によると、海外の大学を卒業した外国人の採用について17年度に「予定あり」と答えた企業は32%に上り、16年度の19%を大きく上回った。外国人留学生の採用は企業規模にかかわらず一般化しており、海外大卒の外国人材の採用意欲についても高まっているという。一方、多くの企業が高度な日本語能力を前提としていることが、実際に採用する際の壁にもなっている。

そうした中、日本語能力を不問とした外国人の新卒採用を行っているのが双日。グローバル・人材育成課のグローバルチームリーダー、デイビッド・ウィリアムズ氏は「日本語能力を条件とすることは海外で採用活動をする上で大きな壁となり、本当に優れた学生を採用することが難しくなる」として、内定時から日本語習得のための支援を行っていると説明。新入社員107人のうち外国人は中国や香港、韓国、タイ、ベトナム、インドネシアの国籍を持つ7人。そのうち5人が海外の大学を卒業した。

双日は11年度から海外での採用活動を始めた。18年4月入社の採用活動は香港やシンガポールでの選考を終え、現在はインドネシアやタイで選考活動中。海外大卒の新卒採用は5-6人を予定しているといい、例年新入社員の1割前後が外国人という。今後はベトナムなど他の東南アジア諸国連合(ASEAN)で採用活動を広げることも検討している。

(更新前の記事で三菱商事からの申し出により外国人の新入社員数を1人から2人に訂正済みです)